006:技術者、ユーザすべてのIT関係者に向けて本を上梓しました。

この度、株式会社カットシステム様(http://www.cutt.co.jp/)より本を上梓することになりました。

書籍

・タイトル:「チューリングマシン説明できますか?」

・サブタイトル:「計算機誕生の背景・歴史と論理学・数学基礎論を探り、情報社会とIT、インターネットの現在と将来を考える」

サブタイトルにあるように、その内容はチューリングマシンに限定されず、遥か紀元前のアバカス(ソロバンと同じ原理の計算具)やギリシャのアリストテレス論理学から今日のWeb社会までのIT歴史について記述したものです。今日、おそらく数十万人の人々がIT関連の仕事に従事されていると思いますが、タイトルにあるチューリングマシンについての説明はおろかチューリングの名前さえ知らない人がほとんどではないでしょうか。ITの発展に大きな功績があったひとに授与される賞にチューリング賞というものがありますが、それはIT界のノーベル賞と言われるほど名誉ある賞です。現代の日本でほとんどの人がノーベル賞を知っているのと同じように、IT業界でチューリング賞が知られていてもよいはずです。ところが残念なことにその知名度はほとんどないというのが実態ではないでしょうか。

もちろん、日々の業務に忙殺されている技術者の皆さんにとっては、チューリングを知らないことで何らかの実務上の支障をきたすことはありません。しかし、一方で自らが従事する業界でノーベル賞に匹敵する賞の存在を知らないということは、それはそれで大きな問題ではないかと思います。ただし、その責任は不勉強として単に個々の技術者に帰すことではなく、かつて新3Kと言われたように納期に追われ日々の仕事に忙殺されるだけの職場環境を結果的に作り上げてしまった業界全体にその所在があるのではないでしょうか。

企業向けサービスを生業とするIT企業は現在大きな踊り場にいるといっていいでしょう。プログラマーを中心にオフショアとの価格競争に晒され、またリーマンショック以降低価格化の波はシステムエンジニアやコンサルタントにまでおよび回復の兆しは見えていません。大手ITベンダーを元請とした再委託のピラミッド構造は、3次請、4次請は当たり前で、ある調査によると最大8次請までのプロジェクトがあったそうです。当然下位に行けば行くほど価格は抑えられ、会社の利益率は圧迫され、それはどんなに経営者が努力しようとも、最終的にその会社で働く従業員の給与に吸収されます。労働集約的な業界において価格競争が激化すれば、利益や給与を減らすか、無理して人より多く働くか、いずれかで窮地をしのぐしかありません。今のIT業界は疲弊しているといっていいでしょう。このような状態があと数年続けば業界全体が崩壊する可能性さえあります。このような事態の打開のためには何らかのブレイクスルーが必要ではないでしょうか。

一方、ユーザ企業ではここ数十年経営者がITを理解していないと言われ続けています。例えば今日においても、経営者から“うちもビッグデータで何かできないか”とシステム部門に要請があり、手段が先行し目的が後続するような情報システムのプロジェクトが見受けられます。また、それと関係しますが、システム部門は社会環境の変化や企業での情報システムの位置づけの変化に伴い自らのアイデンティティをどこに求めるべきか、模索の状態がこれも数十年間続いています。

拙著はこれらの課題について直接に解を示すわけではありません。しかし拙著は、ITの歴史を通してIT業界を鳥瞰することが

・IT技術者のブレイクスルーが醸成されること。

・ユーザ企業において、経営者とユーザ、システム部門がITの位置づけについて共通理解を持つこと。

に何等かの形で貢献できるものと期待しています。

拙文ではありますが是非お読みいただければと思います。8月23日発売、定価2,520円税込です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です